主軸

 1辺の長さが1の正方形の対角線の長さはルート2です。目的地が正方形の対角方向にあるときに、多くの
人は知ってか知らずか、正方形の各辺の方向を元の座標系として、45度の2次元の座標変換(回転)をして、
新しい軸の方向に向かってルート2の最短距離を歩きます。 主軸変換をすることで、最短距離を見つけると
同時に、もう一つの方向を考える必要がなくなったことになります。座標の回転を司る座標変換マトリクスは
サインとコサインからできていて、それぞれの2乗和が1になることから、逆マトリクスは転置マトリクスという
美しくて便利な形をしています。
  
 そこで、静力学で扱う、フックの法則F=KXを座標変換して、新しい座標の剛性マトリクスKを求めると、
Kの左から座標変換マトリクスを、右から同逆マトリクスをかけるために一般2次形式となります。
3次元では楕円体になります。 材料力学の歪、応力も等しく2次形式です。 主軸とその角度を求める
方法が固有値解析で、固有値は主値を、固有ベクトルはその方向を表します。 多くの場合一番大きい
主値とその方向が問題になります。 歪ゲージが1枚しかない場合は迷わず楕円の軸方向に貼ります。
 さて、それでは固有値解析をせずに、直感的に主軸を見つけるにはどうしたらよいでしょう? 
力を加えた方向に素直に物体が変形したり動いたりすれば、それはすなわち主軸であることを示しています。
自分が物体になったことを想像すると意外にうまくみつかることがあります。幸いなことに主軸の近辺は
ロバストで、少々角度を間違えても値に多くの違いはありません。動力学では、ニュートンの第2法則
F=MAの慣性マトリクスMがやはり2次形式で主値と主軸を持っています。この主軸が傾くと、加えた
モーメントと捩れの方向に違いができます。体操選手や飛び込み選手、はたまた猫も宙返りにひねりを
加えるのは、この主軸を意図的に傾けているからです。
 多くの情報の中から真に重要な情報を見つけて、素早く仕事をこなす技術の達人になるには、主軸を
見つけることが重要です。また、自分の主軸すなわち専門軸を見つけて育てることも大変重要であることは
疑うまでもありません。一度自分自身の主軸を探してみませんか?
ホームに戻る。